■鉄道貨物への切り替え促す国交省〜
「トラック事業者は冷ややかな目」
国土交通省はこのほど、物流部門が排出する温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)削減に向けて、トラックよりも排出量が少ない貨物鉄道への切り替えを促すことにした。これには、JR貨物が6月にまとめる予定の緊急対策に反映させる狙いがあるが、同省のこうした方針についてトラック運送事業者らは冷ややかな目で見ている。
鉄道貨物への切り替えを促す国交省は、すでにJR貨物と自動車部品や食品加工などの荷主業界が参加する官民懇談会を設置している。同会は今後、使い勝手が悪いという批判が多く、トラックに顧客を奪われがちな貨物鉄道の利便性改善などを検討していく。
国内のCO2排出量は現在、トラックなどの物流部門が工場などの産業部門に次いで2番目に多く、05年度時点で2億5700万トンとなっており、全体の約2割を占めている。
京都議定書に基づく政府の温暖化ガス削減計画では、貨物鉄道への切り替えで10年度の排出量を00年度比で90万トン削減する方針だが、現状のペースでは達成は困難とみられている。このため、鉄道輸送への切り替えをさらに加速させようと、荷主業界に促していくことにした。
しかし、荷主業界の要望に沿うことができるほど、現在の鉄道輸送は未整備であるという現実がある。鉄道輸送への切り替えで取扱量に影響のあるトラック運送事業者も、これを見越して「鉄道を利用しろという前に、まずはインフラ整備が重要。例えば、鉄道網は旅客列車の密度が高すぎて貨物列車が首都圏を走れる状態ではない」と、現状が劇的に変化する可能性は低いとみている。
このほかにも、「貨物ターミナルの整備が必至だが、それに注力するのは有効的ではない」といった声や、「貨物鉄道はJR貨物しかないのに、民間企業1社を国が支援することに疑問を感じる」という声も聞かれた。
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