■売上高激減で負債53億円〜
「旧アペックスが民事再生法適用を申請〜売上高激減で負債53億円、DPF装置メーカーの不振にユーザー困惑」
首都圏の8都県市で施行されているディーゼル車の走行規制で、有害物質の排出を防ぐDPF装置や酸化触媒などの後付け装置として認証されている、指定装置メーカーのアペクセラ(中西暁社長、神奈川県相模原市=旧社名アペックス)はこのほど、横浜地裁に民事再生法の適用を申請した。同社では同期間中における業務やアフターサービスなどについて「引き続き行っていく」としているが、相次ぐ指定装置メーカーの倒産や撤退に、ユーザーからは多くの不満が漏れている。
アペクセラは資本金4億1417万円で、従業員数は102人。今回の同申請代理人は高橋理一郎弁護士(横浜市中区)ほか3名。
同社は92年4月に自動車関連部品の製造を目的に設立され、98年4月には株式公開に向け単位株制度導入や株式の額面変更を目的に、休眠会社のエフ・エム・エス(57年5月設立)に吸収合併された形をとって事業を継続し、05年1月に商号をアペックスからアペクセラに変更した。
静岡県芝川町に2工場を持つほか、米国と韓国に連結子会社を持つ自動車パーツメーカーとして、自動車用マフラーの開発製造からスタート。その後、足回り部品や電子制御機器製造へと事業展開し、自動車レース界でも知名度を有していた。
また、ディーゼル車の排ガス除去装置も手掛けて8都県市から認証を得ていたほか、さらに住宅セキュリティー部門にも進出するなど事業を拡大しており、04年3月期には売上高約79億6100万円にまで達した。
しかし、自動車関連部品製造への依存から脱却するために、関連会社の吸収や新規事業への進出、社内カンパニー制導入など、矢継ぎ早の改革に取り組んだものの、新規事業は軌道に乗らず主力部門の不振も重なったことから、06年3月期には売上高約49億5000万円にまで減少。人件費や減価償却負担が大きく大幅な赤字となり、債務超過に転落していた。
このため、子会社の整理や新規事業からの撤退、経費削減にも取り組んだが、業況回復の見込みが立たず、資金繰りが悪化したことから今回の措置となった。負債額は約53億円。
民事再生法の手続きについて、アペクセラでは「皆様には今まで弊社製品をご愛用いただき、厚く御礼申し上げます。民事再生期間中の業務につきましては、アフターサービスを含めて引き続き行ってまいりますので、今まで同様に弊社製品をご愛用いただけますようにお願い申し上げます。取締役および社員一同、今まで以上の品質向上、サービスの向上に力を注いでまいります。ご心配をお掛けいたしますことをお詫び申し上げますとともに、今まで以上に弊社製品をご愛用いただけますよう、重ねてお願い申し上げます」とのコメントを発表している。
なお、同社の排ガス除去装置における事業は01年5月、アペクセラDPFシステムの設立(その後アペクセラデザイニングソリューションへ社名変更)に始まり、02年1月には「アペックスDPF」2シリーズが8都県市の指定装置として認証(カテゴリー1・2・3・4・5クリアー)され同4月には全シリーズのDPF装置が同認証を取得している。
03年5月には、酸化触媒装置の「アペックスCATA」が同認証を取得(カテゴリー3・4・5クリアー)しており、同12月にはアペックスへ合併吸収されて、事業部名称を「ADSカンパニー」とした。04年3月には、DPF装置1万台の販売実績を達成していた。
8都県市が認証した排ガス除去装置ではこれまで、DPF装置のリコール問題で多額の損失が生じたシルバーメディカル社や、販売を中止した三井物産など倒産、撤退(いずれも既報)するケースが相次いでいる。
こうした実態について、多くのユーザーからは「今後のメンテナンスに不安がある」などと困惑する声のほか、装置の認証をする立場である東京都をはじめとする8都県市の認証責任を問う声も噴出している。
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